誰のため? なんのため?

服屋で商品を見ていたら、店員さんに色々話しかけられてなんだか疲れた―皆さんも経験があるのではないでしょうか。「必要な時は自分から声をかけるから放っておいてほしい」「こっちにはこっちのペースがあるのに」という気持ちはよくわかります。

それに関連した興味深い実験をご紹介しましょう。

とある服屋の入口を2つに分けます。一方は「声かけOK」、もう一方は「声かけNG」の入口です。お客さんはどちらかを選んで入店します。店員はそれに応じて、声をかけるか、見守るか、対応を変えます。
一日を通して、お客さんの割合は「声かけNG」が圧倒的多数。お客さんからは「自分のペースを守れる」「ストレスを感じない」ととても好印象。しかし、その日の店の売上げはひどいもので、これが続いたらすぐに店が潰れてしまうレベルだったそうです。

その人のペースを守り、意思を尊重するなら「声をかけない」が正解です。ただただ嫌な思いをしたり、要らないものを押し付けられるようなことは、あってはいけません。
でも、ちょっと嫌だなと感じながらも話を聞いてみたら、自分だけでは気づけなかったことに気づけた、思いがけず良い物が手に入った、結果的には話してよかった、ということもあるでしょう。

「守る」とは? 「尊重」とは? 誰のためで、何のためなの? …決まった答えはありません。これは支援にも通じる視点だと思います。常に考え続けたいものですね。

【担当心理士:M】

2023年08月10日